「TOKYO MER」5話大人の政治生命と、妊婦と胎児の命の重さ
東京海浜病院には政治家の天沼が、自らの不正を暴かれることを恐れて、雲隠れ入院していた。
しかしそれには別の目的があった。東京都知事の赤塚が肝いりで政策として行っている「TOKYO MER」の現場を自分の目で見るため。
それはもちろん良い意味ではない。そして音羽は相変わらず、白金にMERを早く潰すように迫られていた。
音羽は赤沼に頼まれて、「MER」の本部が置かれている地下へ行こうとエレベーターに乗った。
しかしその頃、ボランティアで小児科の子供たちに紙芝居を見せていた、喜多見の妹涼香、容体がおもわしくない妊婦を車椅子に乗せ3階から乗ろうとしていた。
それを拒む天沼。しかし妊婦も様子がおかしいので、早くエレベーターに乗せ涼香。無理矢理エレベーターに乗り込んだ。
しかしその空地下3階の機械室では、エレベーター会社の管理会社が変更し、引き継ぎの関係で定期点検が行われておらず不具合が起き始めていた。
そしてエレベータは、1階に着く前に止まってしまった。表向き天沼は「狭心症」と言うことで入院しているので、自分を早く救助するように音羽に訴えた。
しかし音羽は、妊婦の様子が気になっていた。エレベーターの管理会社に連絡するとともに、小規模災害のためMERの出動を要請した。
天沼には「あちらの女性は、MERの喜多見チーフの妹さんです。」と伝えた。つまりMERが優先的に親族を救助すれば、その存在が危ぶまれる。ということを暗に伝えた。
MERはすぐにエレベーター前に集合し、救急指令本部からの映像を共有した。中には4人。妊婦の姿も確認できた。
天沼は自分だけが助かりたい一心で、騒いでいたが、機械室が火花を散らし火災が発生した。その煙が充満しエレベーターの中まで入ってきた。
その頃小規模災害と言うことで、千住率いるレスキュー隊も到着した。そして建物の構造を確認して、5階からエレベーターの上に通じる扉に降りられることがわかった。
涼香は車椅子を移動させ一番奥の角に、妊婦の顔を近づけた。少しでも多く酸素を吸ってもらうため。そして喜多見に、中の患者のカルテが届いた。優先すべきは妊婦。
しかし、社会的に優先すべきは天沼。そこで最低限の医療機器と、MERのヘッドセットを1つの袋に入れて、千住に託していた。
まずは中の者に酸素を届ける必要があった。しかし簡易の酸素吸入器は3つしかなかった。千住はまず酸素吸入器を届けるためにエレベーターの上から物資を下ろした。
天沼は我先にと酸素吸入を始めた。そして音羽は妊婦と、涼香を優先して自分は使わなくても大丈夫だと涼香に伝えた。
しかし天沼は自分が助かりたいばかりに、上に間扉に向かって何度も飛びはねたため、エレベーターを支えていた3本のワイヤーのうち1本が切れてしまった。
これ以上エレベーター内で、人が動くとさらに危険が増すと、音羽は天沼に注意を促すも、自己中心的な人物にはその言葉は届かなかった。
天沼を優先するふりをして、妊婦の観察を続けていた音羽は、破水していることに気づき、お腹を触診してみた。すると胎児は生きているが、
へその緒から先に出てきてしまう可能性が高まっていた。しかし音羽は触診したまま胎児の様子を伺っていなければいけないので、動けない涼香にヘッドセットを探して、喜多見に妊婦の容体を知らせるように伝えた。
しかしどこを探してもヘッドセットは見つからなかった。最終手段として涼香は手話でカメラに向かって状態を伝えだした。(お兄ちゃん気づいて)
すると、共有画像のタブレットを持っていた喜多見が、すぐさま気づいた。一緒に待機していた夏梅たちが手話?できるものを探してくる。と走り出そうとすると、
喜多見が声に出して読み上げた。胎児が危険な状態にあることが分かった。夏梅にすぐさま必要なものを用意させて、
ミンには1階で新生児がすぐに保育器に入れるように準備するように指示した。改めて千住にエレベーターのドアがあとどのくらいで開くか確かめた。
「10分」喜多見にも、音羽にもその時間が胎児には持たないと言うことを把握できた。音羽は自身の政治生命をかけるか、医師として人の命を助けるか、
究極の選択が迫られた。しかし政治生命を断つ思いで、妊婦のオペに取り掛かった。涼香は自分の酸素吸入器を音羽に当てた。
遠慮する音羽に涼香は「私を誰の妹だと思ってるんですか?」と言われて、音羽は素直に酸素吸入を受けながら、オペを開始した。
そして最初の物資だけでは足りないので、千住も中の人員を引き上げるよりも、オペが優先されることを理解し、喜多見を下に降ろした。
ちょうど涼香が音羽と、妊婦に酸素吸入器を当てていたので、涼香の意識が遠のくところだった。喜多見はすぐに自分の酸素吸入器を音羽につけた。
そして涼香に酸素吸入器を戻し、天沼に自分が持ってきた簡易酸素吸入器を、持っているように指示をした。
「オペの手伝いをすれば、国民の支持が上がりますよ」とささやいた。天沼の1番欲しい国民の支持率。そのために天沼はおとなしく喜多見に酸素吸入器を当て続けた。
オペを交代しようとしたが、音羽が「主治医は自分です」と、言ったので喜多見は助手に徹することにした。しかしお腹から出てきた赤ちゃんは、すでに心臓が停止していた。
懸命に心臓マッサージを行いながら、へその緒から薬を注入し、何とか蘇生を試みていた。するとエレベータのドアが開いた。
そこには自分の上司である白金厚生省大臣もいたが、医師として人の命を助けるその思いだけで、懸命に赤ちゃんに心臓マッサージを施していた。
そして、速やかに天沼と涼香と車いす二台を外に出し、重量に気をつけながら、胎児を助けるためにMERが中に入った。
速やかに赤ちゃんに心電図が装着され、より詳しく赤ちゃんの状態を把握することができた。音羽その間も心臓マッサージを続けた。
知らず知らずに「生きろ!生きろ!」とつぶやきながら懸命に、小さな命呼びかけていた。しかしなかなか心拍を開始することがなかった。
心配して見守る母親。音羽が蘇生を試みている間に、喜多見は速やかに母親のお腹の縫合を行っていた。そしてやっとかすかに心拍が動き出した。
そして小さな泣き声を上げた。無事に赤ちゃんを救うことができた。すぐに保育に乗せ、母親もストレッチャーで搬送されていった。
それを見送っていた音羽は、意識を失って倒れるところだったが、喜多見がそれを後ろに立っていて助けた。そのまま眠り続けた音羽。
天沼より、赤ちゃんを優先したことで、自分の政治生命は終わったと思っていた。目覚めると涼香がそばにずっとついていてくれた。
涼香は「音羽さんは初めから、天沼ではなく妊婦を助けるつもりでいた。だからMERを呼んだ」と兄から聞きました。と音羽に伝えた。
そしてそこに白金大臣たちが来たため、涼香に席をはずしてもらった。自分はもうクビになる覚悟で話を聞こうと思っていた。
しかし、告げられたのは現状維持。そしてしばらくの間MERつぶしについての動きを控えるように通告された。
それは赤塚知事が記者会見で「今回の救出については天沼大臣が、自らの命よりも、妊婦の救出を優先させるよう指示をしたため」と記者会見で答えていた。
その一件で機嫌を良くした天沼は、秘書を通じて音羽にお金を託していた。それは妊婦だった女性に、エレベーターの中での事は口外しないようにと言う口止め料だった。
しかし、母親となった女性はお金を受け取ることを拒否した。「この子が助かっただけで充分です」と言って音羽に赤ちゃんの顔を見せに近づいた。
すると音羽は赤ちゃんに向かって手を差し出した、赤ちゃんはぎゅっと音羽の指を握った。音羽の目にうっすらと涙が浮かんだ。
今回の自分の選択に間違いはなかった。そして周りの者たちが、自分の選択について、自らが被る被害を最小限に抑えるため、考慮してくれた行動に感謝した。
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