「祈りのカルテ」8 話、火傷の不審な痕と、広がる火傷、彼女が隠していた事実

諏訪野たちの研修医生活も残るところあとわずかとなった。諏訪野は実家が病院を営んでいる橘と組んで

 

桃井医師の元、皮膚科の研修に入った。彼女曰く女性に優し科だいと言う。では他に比べて患者が少ないこと。

 

そのため定時で帰れることが多い。ある場合を除いてだったが。

 

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搬送されてきた女性の不審なやけど

「ある場合」と言うのは、ひどい火傷で救急搬送されてくれば良い。まさにその時が訪れた。

 

女性が自宅で調理中に、誤って揚げ油が足にかかってしまったと言う。その火傷はひどく、肌の内部まで傷は及んでいた。

 

女性は母子家庭であり、惣菜屋さんで働いているが、3週間入院が必要となった。それは皮膚移植のためだった。

 

しかし、女性の子供を連れて訪れた男性がいた。子供は男性のことを「先生」と呼んでいた。

 

彼女が働く惣菜屋の近くの学校の先生らしい。知り合って1年になると言う。すでに結婚も意識しているらしい。

 

諏訪野は彼女の担当となった。しかし傷口の包帯を替えるときに、火傷の下に「黒い斑点」を見つけた。

 

一方橘は、彼女が火傷で運ばれてきた時、足に火傷を負っているにもかかわらず、ロングスカートを履いていたことを。

 

そして、彼女が働く惣菜屋のそばで、不審火があったことなどから、彼女が放火犯ではないかと疑っていた。

 

そんなことを医局で話していたが、桃井は「そんなことよりも患者さんの傷を治すことを優先すること」と戒めた。

 

しかしその日の夜、夜勤の見回りが過ぎ去った後、彼女は病室から姿を消してしまった。そして翌朝帰ってきた。

 

子供が学校で雑巾が必要だと言うので、家まで縫いに帰っていたと言う。「貧乏人にはそれぐらい必要」

 

と話す彼女だったが、またもや彼女の家の近くで、不審火が起きてしまった。またしても橘は彼女を疑っていた。

 

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戻ってきた彼女と広がる火傷

諏訪野は担当医として、彼女の包帯をこまめに変える必要があった。しかし彼女が無断で外出した翌日

 

包帯を変えようとすると、火傷が広がっていることに気づいた。そして医師同士で話し合ってみるが

 

やはり彼女の火傷は、当初の診断よりも広がっている。そしていつもお見舞いに来る彼は、最近耳鳴りがひどいと言う。

 

そこで彼女は突発性難聴を疑い、すぐに耳鼻科で診察してもらうように取り計らってくれるよう頼んできた。

 

しかし男性は、カルテにどのようなことを書くのか聞いてきた。病状や職業などを書くこと言うと、彼は「保険証忘れた」と言って診察を受けなかった。

 

諏訪野は彼女の火傷が広がっている原因を調べようと、カルテを見ていると一年前に「突発性難聴」で通院歴があった。

 

しかし当時はカルテが電子化されておらず、内容まではわからなかった。そしていつも見舞いに来る彼に、

 

彼女の足にある「黒い発疹」について聞いてみた。しかしいつも彼女はロングスカートを履いており、足すら見たことないと言う。

 

そして来週、自分の両親と彼女とその息子を連れて温泉に行くと言う。そんな矢先の火傷だった。

 

彼女は、彼が耳の診察を受けてないことを知ると、改めてまた診察を受けるように勧めてきた。

 

そこで諏訪野は耳鼻科に一緒に向かいながら、なぜこのあいだは逃げたのか聞いてみた。

 

すると1年前に、たまたま彼女が働く惣菜屋でサンドイッチを買い、彼女に一目惚れをした。

 

しかし彼女は彼のことを、近くの学校の先生だと勘違いしていた。本当はチラシなどをデザインする仕事を自宅でしているが、

 

彼女に好かれるために嘘をついた。だから職業などを聞かれると困ると、診察から逃げていたのだった。

 

しかし実際に診察をしてみると、耳鳴りは大した事なく、突発性難聴の疑いもなかった。

 

諏訪のはまだ電子化されていなかった、彼女のカルテを必死に探した。すると彼女が1年前に「MRI検査拒否」をしていることがわかった。

 

 

彼女が隠していた事実

諏訪野は総合的に見て、MRI検査を拒否する場合、ペースメーカーを埋め込んでいる場合や、磁力に引き寄せられるものが体にある場合。

 

タトゥーなどがその対象になることもある。そのようなことから、彼が包帯を替えるときに「黒い発疹」を見つけたこと

 

その後に彼女が無断外出をしたことで、謎が解けた気がした。彼女はいつもロングスカートを履いていたのは、

 

右足のふくらはぎ横に入れたタトゥーを隠すため。彼女曰く「昔の彼の名前」が刻まれていたと言う。

 

しかし今の彼と付き合うにあたり、そのタトゥーを消したかったが、雑巾を買うお金がない位にお金に困っているのに、

 

レーザー手術を受けるお金はなかった。そこで思いついたのが「火傷」だった。これでタトゥーを消せると思っていた。

 

しかし完全に消えてないことに気づき、無断外出をして再び油を浴び、火傷を広げた。

 

橘は実家が病院を営んでいるため、医師になったがその意味が見出せなかった。だから彼女がしたことも理解できなかった。

 

しかし諏訪野は、彼女がした事は理解できないが、その行為によって肌の内部にまでやけどが広がり、

 

最悪の場合、細菌感染を起こし、敗血症でなくなる可能性や、足を切断する可能性すらあった。

 

火傷をする前に「息子さんのことを思わなかったのですか!」と言って彼女が行った事は間違っていたと諭した。

 

彼女は改めて自分がしたことが、いかに浅はかか分かり、彼に全てを打ち明け、彼も全てを打ち明けた。

 

そして互いに、気持ちを打ち明けあったことにより、さらに絆を深めることができた。

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