ジェーンスーの半生を綴った吉田羊主演「生きるとか、死ぬとか、親父とか」9話

トキコは出版社から次のエッセイについて、話題が何になるのかを聞かれていた。

 

しかし「父の事について書く」と言ったものの、既にネタが切れてしまっている。そこで出版社は旅行を提案した。

 

次の墓参りでの事、珍しく父親がおにぎりを持参してくると言うので、トキコは味噌汁とおかずを作った。

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よみがえる思い出

父親はアルミホイルに包まれたおにぎりを2つお供えした。トキコもその前にお味噌汁とおかずをお供えした。

 

少し嫌味に「誰が握ったか知らないが」と言ってみる時子だが、いつものようにはぐらかす父親。

 

そしてお墓の近くにある東屋で、お弁当を食べることになった。お味噌汁は父が好きな千切り大根が入ったお味噌汁だった。

 

これは母もよく作っていた。特に父が肝炎で入院したときには、病院へ作ってもっていくこともあった。

 

しかしその入院こそが、家族の歯車を大きく狂わせたのかもしれない。母は胃薬を飲むことが多くなった。

 

顔色もさえないので、病院を勧めると「毎年健康診断を受けてるから大丈夫」と言って笑ってみせる母。

 

 

しかし後日渡された封筒に、精密検査の案内と書いてあった。やはりどこか体に異常があるらしい。

 

精密検査の結果腎臓の近くに、大きな腫瘍があるらしく、早急に切り取らないと命が危ないと言う。

 

その頃はガン= 死と言うイメージがあったので、母もかなり落ち込んでいた。しかしトキコはまだ現実味がなく、自分のことばかり考えていたのかもしれない。

 

母が入院し、父にそれを伝えるとなぜか父は急に上着を着て、母に会いに行くと言って廊下に出て行ってしまった。

 

母が入院したことにより、父の精神状態がおかしくなってしまったのだ。その日から父に精神安定剤が投与されることになった。

 

そのため今でも父の記憶の中には、母が手術したときの記憶はほとんどないと言える。

 

母は6時間と言う大手術に耐え、一命を取り止めることができた。その報告のため翌日に病院へ行くと、

 

看護師から「昨日お母様がいらしてましたね」と笑顔で言われた。そんなはずはない。あの人だ。その証拠に父の病室には赤い花が飾ってあった。

 

母が好きな花は真っ白な「カラー」だ。トキコは父が寝ている間にその花をすぐに捨てた。

消えない影

母が生きるか死ぬかの瀬戸際にいる時、なおもまだ消えない確かにいる影。そしてそれを絶対に見せない父。

 

母はその影を知りながらも、見ないふりをしてきた。そしてトキコは両親を日替わりで見舞いに行く日々が続いた。

 

思いがけず墓参りにお弁当持参をしたため、封印していた過去がどんどん出てきた。

 

トキコすぐに出版社に電話をかけ、「旅行へ行く記事は書きません。そのかわり母のことを書きます」と伝えた。

 

さっき食べたおにぎりだって、父が握った物でないことぐらいわかっている。でも絶対にその影を見せない。

 

いつもひょうひょうとかわす父親。しかし確かに、昔から父の向こうには人影が見える。トキコずっと他の人の存在を認識しながら、

 

それを責めない母にも、多少の憤りを感じていたのかもしれない。しかし母が手術した日、その人は来ていた。しかも母が嫌いな赤い花を持って。

 

今でもその人いるのだろうか。おにぎりを握ったのはその人なのだろうか。父に聞いても答えは返ってこない。

 

母が入院する前、父の見舞いに行くのはとても楽しそうだった。次の見舞いに来るときに何を持ってくるかリクエストを聞いたり質問していた。

 

すると父親は「お母さんのフレンチトースト絶品。後はミルクティー」と食べたいものをリクエストしていた。父曰くホテルのフレンチトーストの方が美味しくないと言う。

 

母も嬉しくて「少しだけね」と言ってうれしそうに笑っていた。しかし今思い出せば母の好きなものは何だったんだろうか?

母の好きだったもの

父と2人でご飯を食べながら、入院したときの話になり、母はよく父の好物を作って持っていった。

 

しかし、今思い出してみると母の好物は何だったんだろうか?と父に問いかけると自信ありげに答えた。

 

ミルフィーユとコーヒー

トキコが聞きたかったのはそれではなかった。確かにミルフィーユとコーヒーは好きかもしれない。

 

しかしトキコが知りたいのはそれではなかった。好物といっても食事の話だった。でも2人の記憶の中には「ミルフィーユとコーヒー」しか浮かばない。

 

母に思いを巡らしても、トキコもわからない。母は家族の好きなものをよく作ってくれたのかもしれない。

 

でも自分から「これが好き」といった事は無いのかもしれない。だからこそいつも喫茶店などに行くと注文している「ミルフィーユとコーヒー」しか2人には浮かばないのかもしれない。

 

トキコは、母の事について書くと言ったが、どのようなことを書くのだろうか。父の向こうにいる人影について書くのだろうか?

 

父の不倫を黙って我慢していた母のことを書くのだろうか?いずれにせよ、母のことを書くには必ず父のことを書かなければならないのかもしれない。


 

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