「八月は夜のバッティングセンターで」明らかになってきた舞の過去と叔父の思惑
舞が夏休みの間だけ、叔父に頼まれて半ば強引にバッティングセンターでアルバイトをしている。
そこには舞が抱える辛い過去の出来事と、それを乗り越えるための叔父の優しい思惑が見え隠れしている。
果たして舞は辛い過去を乗り切ることができるのだろうか?
舞は夏休みに入ると同時に、叔父が経営しているバッティングセンターで、夜バイトすることになった。
それは半ば強引であり、舞の意見などをそこには尊重されていなかった。しかもいざバイトを始めてみると
見ず知らずの「おじさん=伊藤」が毎日ベンチで座っている。ボールを打つわけでもなくただじっと座っている。
彼もまた舞の叔父の友人であり、夏休みの間だけ、ここで座ってバッターボックスに入る人たちを見るように言われていた。
伊藤は元プロ野球選手だが、選手としては名を残すことができず、野球をよく知る舞でさえ、彼の存在を知らなかった。
しかし叔父がなぜ、伊藤が毎日ベンチに座っているように言ったのか、その意味がだんだんとわかってきた。
彼はバッターボックスに入る人の、バッティングのフォームや、姿勢などからその人が持つ「問題」の本質を見極め、
その問題を解決するにはどうしたらいいのか、答えを導き出すことができるからだ。彼曰く「野球論」は毎回舞を喜ばせた。
伊藤の妄想の世界に入り込む「野球論」では毎回、野球界ではレジェンドとなった選手が登場する。そして直に話を聞くことができる。
それだけでも舞にとってはとても嬉しい出来事だった。毎回ちょっとだけ、伊藤の野球論が出てくるのを楽しみにしていた。
バイトをしながら、伊藤の野球論に触れていくうちに、舞は1枚の写真を眺めることが多くなった。
スマホに収められた1枚の写真。それは女子だけの野球チームを映し出した1枚だった。その中に舞もいた。
そんな姿を見て母親は「またやりたくなったらやればいいのよ」と静かに見守る姿勢を見せた。何か問題が起こり舞は野球をやめてしまった。
仲間たちと励ましあいのつもりでつけていたノートも、一番最後のページは「野球やめる」と言う言葉で締めくくられていた。
どうやらピッチャーとして活躍していたらしいが、ボールの投げ方がわからなくなってしまったのだ。
それは、かつての野球チームの仲間がバッティングセンターに来て明らかになった。舞は1年生でありながら、大会に出て優勝すると言う目標を持っていた。
またその志を同じくした女子高生が1人いた。2人でチームを引っ張っていく存在になっていたが、チームは敗退してしまった。
なぜ勝てなかったのだろうか。そんなことにとらわれている家にある事件が起きてしまった。それが舞を野球から遠ざけたい理由だった。
1年生で大会に出て全国制覇したかった。でもその夢は消えた。でも次があるからと頑張ってきた。
しかし準々決勝で負けてしまい、再び全国制覇の夢は遠のいてしまった。何がいけなかったのか考えるたび、自分の力不足や、
チームの決断力などいろいろなことを考えると、もっと頑張らなくてはいけないと言う気持ちが芽生え始めた。
しかしその叱咤激励にも、チームメートたちはついてこなかった。「これ以上練習したら体が壊れちゃう」と言ってみんな練習を放棄してしまった。
自分に誰もついてこない苛立ちから、チーム同士の練習試合で、ピッチャーマウンドに立った舞は、ある日とんでもないことをしてしまった。
それは自分が勢いよく投げたボールが、一緒に切磋琢磨してきた同級生のバットの根元にあたり、その選手は手首を故障したことにより、野球から離れることになった。
その日を境に舞は「投げる」と言うことが怖くなり、投げ方がわからなくなってしまったのだ。結果的に今3年生になったが、野球を止めてしまった。
しかし、8話の伊藤の野球論で、舞は何かに気がついたようだった。「勝ちたいなら一歩引いたところから見る」と言う言葉が身に染みたのだろう。
2年生のときの自分は「勝つためにはもう練習しかない!」と決めつけていたので、周りがついてこなかった。その結果事故が起きてしまった。
そしてそれ以来相手をもしかしたら傷つけるかもしれない。と言う思いが支配して舞を野球から遠ざけてしまった。
そんな姿を知っている叔父だからこそ、あえてバッティングセンターでバイトをさせて、伊藤に会わせることで自分自身の野球を見直すきっかけを作ったのではないだろうか。
そして伊藤自身も、舞の話を叔父から聞いており、舞のためにいつもバッティングセンターにいるのではないだろうか。
「八月はバッティングセンターで」は【AmazonPrimeVideo】にて1話から配信されています。
原案
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