「八月は夜のパッティングセンターで」3話。プライドが高い和食料理人、1年間の下働きが許せない!
今井は料理学校を出て、和食屋さんで修業を初めて1年が経った。しかしいまだに材料の下ごしらえをしても、「それくらい満足にできないのか!!」
と、叱られ、「皿洗い」へと回される。彼女は専門学校時代は、常に成績優秀で、コンクールで何度も入賞した経験を持っている。
だから、なぜ自分がずっと皿洗いばかりやらされるのか、納得がいかなかった。そして、そのイライラを解消しようと初めてバッティングセンターへ来た。
初めてバッティングセンターに来たので、やり方がわからない今井は、舞に聞いてプロの野球選手の動画を見ていた。
なかなか打とうとしないので、舞が声をかけると、「私は完璧にできるので大丈夫です」と言って、バッティングの態勢に入った。
しかし、1球も打つことができない。彼女の中では【完璧】のはずなのにどうして、自分では1つも球を打てないのか、イラつきをあらわにさせた。
その様子を見ていた舞と、伊藤。舞が「職人かなにかですかね?」というと伊藤は「料理人だ」と答えた。
結局1球も打てないまま出てきた今井に、伊藤が声をかけた「料理人ですか?」というと、驚いたように「はい」と返事をした。
伊藤は舞の推理もあながち間違っていないが、手に貼ってある絆創膏の数からして、【料理人】と予想を立てた。
そして、いくら最初から【プロ】を真似ようとしてもうまくいかない。「あなたはプライドが高い」と指摘した。それにさらにイラついた今井。
舞がいつも楽しみにしている「俺の野球論」がでて、喜ぶ舞。そして、彼女が料理人と聞いて、受付の時に舞自身が料理ができないから
「料理って難しい」と言ったことに、いらだった意味がようやく分かった。彼女は専門学校では優秀だった。だから和食において
「新しい風」を吹かせる料理人になれる!!と自身満々で和食屋で働きだしたが、野菜の仕込みひとつもやらせてもらえず1年。
その理由がわからなかった。みんな私の実力を知らないから。と勝手に思い込んでいた。そして伊藤が連れてきたのは、マウンドではなく観客席。
舞が何で!?と不思議がると「これを見て欲しかったのさ」と、グランドを指さした。そこには現役選手の「川﨑宗則」がいた。
舞は大興奮したが、今井には全く理解不能だった。ただ単純に打った球を受け取って投げ返す。単調な作業を繰り返している。
それが、自分の料理と何がつながるのか!?理解に苦しんだが、伊藤曰く「同じように見えて、全て違う球」それを様々な角度で受け取る。
舞は観客席ではなく、外野からもっと見たい!!と伊藤に言った。すると「どっちみち見るなら、転がった球でも拾え」と指示をした。
そして、しばらくすると川崎は力尽きたのか、グラウンドにあおむけに寝ころんだ。そこに近づいた今井。
「どうして、ずっと続けているんですか?」と聞くと、川崎は「同じように見えても色んな球が飛んでくる」
「よく千本ノックというが、いろんな形で飛んでくる球を受けるうちに、千本以上になる。だから千本ノック、こうしてコツコツと続けることで、やっとどんな球でも取れるようになる」
一流の選手でも毎日、千本ノック以上の球を受け、様々な角度や高さや低さ、そんな状況にいつでも対応できるように、地道に努力していることを知った。
自分は「過去の実績」だけを掲げて、野菜の仕込みの基本を学ぼうとしなかった。翌日から野菜を仕込みながら、時々先輩の包丁さばきを見てマネをするようになった。
なんとなく、やっと職場になじめた気がした。プライドよりも「いいものを作りたいなら、日々の基礎の積み重ね」が大切だと気づいたのだ。
その上に「和食に新しい風」を吹かせることができるのだ。
「八月はバッティングセンターで」は【AmazonPrimeVideo】にて1話から配信されています。
原案
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