「八月は夜のバッティングセンターで」7話、雑誌の企画が出せない女性と、現役50歳で引退した山本昌
ある雑誌編集者で企画会議が行われていたが、武田は結局企画をまとめることができず、近いうちにと返事をした。
しかし、まとめる企画すらすでになかった。新人はどんどん企画を挙げ、評価されていくのに、かつての自分は様々な賞を受賞し
輝いていたはずなのに、気が付けばその輝きは彼女たちへと移っていた。でも、もうひと踏ん張りして企画を出したかった。
武田はバッティングセンターへ来ていた。前は打てたのに今は全然打てない。打つつもりなのにすべてが空振り。
舞がバットを少し短く持つようにアドバイスすると、武田に年齢を聞かれ「高校2年生です」と答えた。
瞬時に【何か企画になりそう!!】と思い、舞に高校生活について聞いたが、「部活」と答える舞にがっかりする武田。
おそらく、今の女子高生の間での流行などを取り上げて、華やかなページを作りたかったのだろう。
しかし、武田はあきらめず「このバッティングセンターの特徴は?」と聞くと、「ちょっとだけアメリカン!?」と答えた舞。
これと言って、どこのバッティングセンターも変わり映えはしないと思うが、そこに武田は自分の最後を賭けたかった。
上司にはそろそろ裏方に回り、新人指導をお願いしたい。と言われたが、それは第一線から退くいわば引退勧告のように聞こえた。
武田はどうしてもあと一花咲かせたい!!そんな強い思いで、編集長にあと少しだけ企画を待ってもらうことにした。
後はどうバッティングセンターについてまとめるか・・・。しかし、何も思いつかない。思い出すのは輝いていたころの自分。
そして、部屋に飾ってあるその輝かしい功績。しかし、そんな功績を見ていても何も浮かばなかった。
気づくと、再びバッティングセンターに来ていた武田は、どうしても1球でも打ちたい!!と頑張っていた。
伊藤が動き出した。舞は待っていた瞬間が来たーーーーー!!と、言ってももうこの展開には慣れてきた。
ピッチャーには武田、守備には編集部員たち。みんな彼女を全力でサポートしていてくれるが、勝てる試合なのに、負けそうになり
やむなく新人にピッチャー交代をせざるを得なかった。すると彼女は水を得た魚のようにどんどん相手からアウトを取っていく。
それを、観客席から涙をタオルで隠しながら見る武田。すると横に日本の野球界では異例の50歳まで現役選手だった山本昌が座った。
彼曰く、「引き際を自分で決めることは難しい」と言いながらも、引き際を決めたからと言って、自分の居場所がなくなるわけではないと諭した。
新人教育をすることで、また違う場所で輝くことができる。というのだ。その言葉を聞き武田は決心が固まった。
これからは裏方のサポートに徹して、もっといい雑誌を作っていくことにした。もう迷いはなかった。
「八月はバッティングセンターで」は【AmazonPrimeVideo】にて1話から配信されています。
原案
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