ジャック&ローズもコロナには勝てなかった「その女、ジルバ」最終話
スミレたちが結婚して8ヶ月以上が経過した。ちょうど新の誕生日の日だった。世間ではコロナが大流行し、お店も客足が途絶えていた。
その中で、新の41歳の誕生会がバーで開かれた。みんなで楽しく飲んで歌おうと言う時に、マスターが「みんなに話がある」とやってきた。
それは、コロナよりより客足が減ったため、この店を維持するには持って半年だと言うこと。新がまだ若いうちに早く決断しなくてはいけない。
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みんなの思い
まさかこんなに世界中に広がるウィルスが、世の中を混乱させるとは誰も思ってもいなかった。
そしてジルバが残したこの店は、あと半年ほどの営業は続けられるが、もし続けた場合は退職金が出せないと言う。
それならば、退職金が出せるうちにこの店を閉めてしまおうと、マスターから提案があった。
それぞれの思いが詰まったこの店。突然の閉店は悲しすぎる。でも待ってもお客が来ない。このままお店を続ける事は難しいと言う事は誰しもわかっていた。
しかも、アララの誕生日の日にそんなことを言わないでほしいと皆が願っていた。しかし、新がアララとして再スタートしたのがちょうど1年前のこの日。
だからこそ、大切な話をマスターしたかった。みんなもその思いを受け止めた。しかし決断には少し時間がかかる。
そんなある日、新の電話に前園から着信が入った。今更何かと思い電話に出てみると、スミレが陣痛を起こし病院に付き添ったところだと言う。
そこで前園パニックになり新たに電話をかけてきた。まずスミレになぜ前園が付き添ったのか。なぜ夫ではなかったのか。
スミレは臨月ギリギリまで、物流倉庫で働いていた。休みも取らずに働いていたため、突然陣痛を起こして病院に行くことになった。だから前園が付き添った。
そしてパニックになった前園は、新たに夫の電話番号を聞こうとして電話をしてきたのだ。しかし冷静に考えれば病院から夫へ連絡がいくはず。
すると石動までが店に来てしまった！コロナにより付き添いができないのだ。しかしはじめてのことで、心細くてお店に来た。
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全員で見守る
そこで、動画を使いみんなで分娩に付き合うことになった。しかし分娩を経験したのはくじらママ1人だった。
マスターは孫がいるので、もちろん子供の出産に立ち会っているはずだが、出産の瞬間が怖いらしく、厨房に引きこもってしまった。
近くには誰も寄り添う事はできないが、動画なのでみんなが見守ってくれている。スミレの夢の瞬間を。
そして、分娩の痛みや辛さから、くじけそうになった時、くじらママにアドバイスをもらってスミレは頑張った。
そして陣痛から8時間後、無事に女の子を出産した。41歳と言う高齢出産になったが、スミレは夢をかなえることができた。
そしていつしかみんな寝てしまったが、新と夫だけはずっと見守ってくれていた。そして元気な産声を聞いた。
母に捨てられて、孤児院で育ったすぐスミレとって、家族を持つと言う事はとても叶えられそうもない夢だった。
でもジャックアンドローズのクリスマス会で、奇跡が起きて彼ができた。そしてプロポーズされ、結婚式もジャック&ローズで行った。
人一倍の負けん気の強さのスミレは、出産ギリギリまで働いた。そしてジャック&ローズの皆に見守られながら、新たな命を授かった。
スミレにとってジャックアンドローズは、夢を叶えられた場所だった。しかも1年の中で全て叶ってしまった。
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決断の日
そんな幸せを運ぶジャック&ローズでも、決断しなければいけない日が迫っていた。
やはり、お店を閉めて従業員を解雇する。それがマスターの決断だった。しかしアララは聞いてしまった。
店を閉める前に、くじらママからのお願いでマスターと2人ホールで踊っていた。下から音楽が聞こえてきたので見に行くと、2人は静かに踊っているのがみえた。
そしてママはマスターから本当のことを聞こうとしていた。マスターには心残りがあった。ブラジルから日本に来て、この店を始めて以来ジルバはブラジルに1度も帰らなかった。
それは自分たちが、ジルバを頼りこの店に縛り付けていたのではないだろうか。そんなことを聞いたママは、「だからアララを地元に帰すのね」
いつの日か、アララがジルバの部屋でバングルを見ているときにマスターがやってきた。
ジルバがそのバングルを大切に持っていたことに驚いたマスターだったが、1つ新たにお願いをした。
それは自分が亡くなったら、そのバングルとともにブラジルへ行き、ジルバのお墓に埋めて欲しいと言うものだった。
それは奇遇にもジルバが、チーママに託していた願いと同じだった。しかしマスターは高所恐怖症だからブラジルへは行けないと言う。
ジルバは死ぬまでマスターのことを思い、マスターもいまだにジルバのことを忘れられないでいる。いつかその夢をアララが叶えてあげなければいけない。そんな日がいつ来るのだろうか。
しかし時は容赦なく進み、新は地元に帰ることになった。白浜さんからの写真集を見ながら、荷造りをして実家に帰った。
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