「100万回言えばよかった」1話、20年ぶりの再会、ハンバーグの味、最後のハンバーグ
直木と悠依は家庭の事情で、中学校の時、同じ里親のもとで育った。本来ならば直木と悠依は
会う予定がなかった。なぜならば直木が家に帰り、それから悠依が里親のもとに来るを予定だった。
しかし直木の家の事情で、預かり期間が延長されたため、中学校の3年間、同じ家で生活することになった。
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20年ぶりの再会
2人は中学を卒業して、悠依は実の親の下に帰り、そこから高校に通うことになった。しかし直木は
寮のある進学校に入学した。それ以来20年間2人は会うことがなかった。なぜ20年間も合わなかったのか?
それが、不思議な位に、2人は初めて会った時から、お互いのことが手に取るようにわかっていた。
そして、初めて里親の家に来た時、悠依は直木が作ったハンバーグの味に感動した。とてもおいしかったのだ。
そして、その夜悠依は肌寒さを感じていると、直木が「ほとんど着ないから」と言って、自分のセーターをくれた。
悠依は着るものをあまり持ってこなかったので、とても嬉しかった。そしてここは夜になるととても冷える事は知らなかった。
直木がいてとても助かった。しかし中学を卒業したら、自然に2人とも連絡を取らなくなった。
しかし、社会人になり悠依がたまたま入ったレストランで、ハンバーグを注文した時、「この味は…?」と思い作った人を
一生懸命見ようとしたが、何かが邪魔してみることができなかった。しかし、食品衛生管理者の名前が直木だった。
喜んで席に再びつこうとすると、目の前に直木が立っていて、驚いた。
懐かしいハンバーグの味
悠依はあのハンバーグをひと口食べただけで、直木が作ったハンバーグだと分かった。自分の舌が「すごい」と思った。
里親の家で食べたハンバーグの味。それが今ではお店の味になっていた。そしてそれ以来、なぜ20年間も合わなかったのか?
それが不思議な位に2人は自然に付き合うようになっていた。そして誕生日の日には、必ずハンバーグとプリンを用意してくれた。
しかし、付き合って1年目の誕生日の日、プリンを楽しみにしていた悠依は、ひと口食べて、思わず口から出しそうになってしまった。
甘いはずのプリンがとても塩からかったのだ。そんなはずはないと思い直木も、ひと口食べてみたが、やはり塩と砂糖間違えていた。
そのくらいに緊張して、初めて2人で祝う悠依の誕生日を用意していたのだ。悠依は毎年誕生日はハンバーグがいい。
と言っていたので、2年目の誕生日もハンバーグを用意していた。しかし悠依がどんなに部屋で待っていても
直木が帰ってくる事はなかった。日付が変わる頃にやっと帰ってきたが、悠依は帰ろうとした。
しかし、どこか歯切れの悪い直木に、冷蔵庫を開けてみると、ハンバーグとプリンが用意してあった。
今度はちゃんと甘いプリンだった。2人が出会った時から、お互い会話がなくても、気持ちが通じ合ってしまう部分があり、
あまり言葉をかわさなくても、通じてしまうので、言葉にしないことが多かった。直木は子供食堂をやっていた。
美容師の悠依は、それを手伝って、食べに来た子供たちの髪をカットしたこともあった。
その後で、2人が中学生の時によく読んでいた「100万回生きた猫」を悠依が子供たちに読み聞かせをしていたが
直木がそれを止めた。「声が少し枯れているし、顔色も悪い。これから熱が出るからすぐに帰れ!」と言ってきた。
悠依には自覚はなかったが、帰ると38度近い熱が出た。こんなふうにして、お互いのことがわかってしまうのだった。
最後のハンバーグ
悠依は警察にいた。直木が自分で何も言わないまま。三日間も家に帰らない。お店にも何の連絡もない。
そこで行方不明者届けを出そうと思い、警察に来た。ちょうど管内で殺人事件が起きており、バタバタしていたが、
刑事の魚住がちょうど通りかかり、「受理してあげれば?」と受付の女性に言ってくれた。
しかし、魚住は「大人の場合は捜査はほとんどしないです。ほぼ本人の意思でいなくなる可能性が高いからです」と言われてしまった。
魚住は、殺人事件の捜査中に悠依が見せてくれた、直木の写真によく似た男性を見かけた。「普通にいるじゃん」と思ったが、
様子がおかしかった。彼は道の真ん中にいるのに、だれも彼を邪魔にしない。邪魔にしないどころか、通り抜けていく。
魚住は思い出した。実家はお寺であり、代々霊が見える家系だったが、自分だけ何故か今まで何の霊も見えたことがなかった。
しかし、直木は魚住に気づいて近づいてきた。そして「やっと話を聞いてくれる人がいた」とつぶやいた。
彼の姿は、他の人から見えないので、声も聞こえることがない。そして魚住は、彼がこういう状態であること言う事は
既にもうこの世にはいないということ。忙しいことを理由に直木の話しをあまり聞かなかった。
その後悠依に会ったが、魚住は直木が既にもうこの世にいないかもしれない可能性を打ち明けた。
それを信じられない悠依。そして魚住は姉からの電話を受けた。姉は何かを感じたのだ。そして「その人の力になってあげて」と口にした。
直木は魚住にお願いをして、レストランに来てもらった。そして、玉ねぎを炒めて、味付けをいろいろ指示にしたが、
素人の魚住には難しかった。その瞬間魚住は異様な感覚を覚えた。そしてその後まるでシェフのように、生き生きと動き出した。
直木が魚住の体に乗り移ったのだ。そして全てが完成する頃、魚住からのメールを受け取った悠依が、お店にやってきて
メールについて文句を言ったが、カウンターの上にはハンバーグが置かれていた。「食べてください」と言うと、再び魚住の様子がおかしくなった。
直木が魚住の体から追い出されてしまったのだ。見慣れたハンバーグを半信半疑で悠依は口にした。
目の前にいるのは魚住だが、確かにハンバーグの味は直木に間違いなかった。そして直木は魚住に後にあるプリン出すようにお願いした。
魚住は「こちらもだそうです」と言ってプリンを出した。それを口にした悠依は、「ちゃんと甘い…」と言葉にした。
自分には見えないし、声も聞こえないが、確かにそこに直木がいること理解するのに、十分な料理だった。
しかし直木はどこにいるのだろうか?魚住が殺人事件の捜査をしていると、防犯カメラに直木の姿が映った。
殺人事件に関連して、直木は何らかの事件に巻き込まれたのだろうか。
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