子供を抱えて女優を続けたい同級生、彼女の出した結論は?「西荻窪 三ツ星洋酒堂」2話
3人はグループメッセージでやりとりをしていた。朝1番に店に来るのは雨宮だった。
そして、開店前の報告などをメールで送信していた。古いお店なので、エアコンが壊れているらしく修理を手配したとメールしていた。
そして隣の古本屋さんに3時に来てもらうようにお願いしていた。
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スーパーで偶然見かけた同級生
中内は、出勤前にスーパーに寄っていた。そして店内を歩いていると、缶詰売り場に同級生を見つけた。
浅田と言う女性だった。彼女は高校1年のクラスメートで、今は女優として頑張っていると言う。
中内は声をかけるが、浅田あまり覚えていないようだった。しかしそれ以上に気になるのは彼女があまりにも機嫌が悪いことだった。
どうやら女優と言うことに、触れて欲しくないようだった。そこで中内はお店の名刺を渡し「誰でもきていいお店だから」と彼女と別れた。
お店では修理業者がやってきて、様々なリフォームを提案していた。しかし期限付きのお店なので、それほどリフォームをする必要もないだろう。
しかし、雨宮はどこかを変えたいと思っていた。そして修理業者が本棚に当たった時、本棚が崩れ落ちてしまった。
ちょうど来ていた古本屋さんが、さすがにアンティークは壊れ方もアンティークですね。と言っていた。
そして出勤してきた中内に、厨房の使い心地を聞いてみたが特に注文はなかった。厨房は変える必要なし。
店の開店
お店が開店してもなかなかお客は来なかった。そこで中内は外に出て様子を見てみた。
そこには昼間にあった浅田がいた。いつからそこに立っていたのか。店の窓からは見えない位置にずっといたみたいだ。
中内が店に招き入れると「誰が来てもいい店なのよね!!」と、カウンターに赤ちゃんを寝かせた。あまりの出来事に2人は驚いたが、何も言わなかった。
一番強いお酒をオーダーした彼女は、やはりどこか苛立っていて、落ち着かない様子だった。雨宮は言われるままにカクテルを作ろうとした。
しかしシェイカーを振りだした途端、赤ちゃんが泣き始めてしまった。中内が慌ててあやすが、泣き止む様子はなかった。
浅田は、赤ちゃんを泣き止ませるよりもお酒を先に要求した。そこに小林が出勤してきて、赤ちゃんを抱いた途端泣きやんだ。まるで魔法だった。
そしてカクテルが出来上がると、少しだけ彼女は男だ。しかし雨宮はあまり飲むことを勧めなかった。するといっそう機嫌が悪くなり「子供がいるからお酒も飲んじゃいけないの!!」
そういう理由ではなく、飲んでいる彼女の仕草が、無理しているように見えたからだった。それは中内が見抜いていた。
女優の仕事
彼女はぽつりぽつりと話しだした。赤ちゃんを産んで、事務所を辞めた。しかし昔からお世話になっている監督から、直々に電話があり映画に出演してほしいと言われた。
しかし、長期の仕事になるので、赤ちゃんを預けるにも預け先もなく、夫に相談しても仕事は休めないと言われる。
やりたいことが目の前にあるのに、赤ちゃんがいるから諦めなくちゃいけないの?それが現実なのかと彼女は落ち込んでいた。
すると小林が、赤ちゃん捨てちゃったらととんでもないことを言った。まるで彼女を挑発するような言い方だったが、彼なりに彼女の本心を引き出すための言葉だったようだ。
そして中内は言った、さっき缶詰売り場で浅田を見たとき、毎日しっかりとご飯を作ってちゃんとお母さんをしてるんだとわかったよ。
ちゃんとお母さんもやって、子育てしてすごく立派だと思った。とても頑張っていると思った。
彼女は缶詰を買うことを戸惑っていた。缶詰といえばイメージ的に「手抜き」と言う感覚があり、彼女は戸惑っていたのだろう。
そして中内は、缶詰で作った料理を振る舞った。決して手抜きでは無い缶詰も立派な料理になる。それを彼は伝えたかった。
そこに、家にいないことを心配した夫が電話をかけてきた。そしてお店まで迎えに来た。雨宮はノンアルコールのカクテルも作っていたが、
帰り際彼女は、両方のカクテルを飲みほし「私、両方とも手放さない!!」と明るい顔で帰っていった。
そして翌日、店では壊れた本棚の素材を使って、店の壁一面に缶詰の棚が作られた。雨宮が何かしたかったこと。ちょっとしたことだけど見つけられた。
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