TBS「オー!マイ!ボス!恋は別冊で」こんなはずじゃなかった東京暮らし

奈美はただ、普通に働いて、普通にお給料もらって、健ちゃんのそばにいたいだけだった。

そして、公認会計士として働く健ちゃんと結婚し、平凡で幸せな家庭を築くことが夢だった。

なのに、あまりにも忙し過ぎてけんちゃんに会うことすらできない毎日。こんなはずじゃなかった。

 

健ちゃんの誕生日

今度の日曜日は健ちゃんの誕生日だった。そんな時に健ちゃんから電話があった。

「今度僕の誕生日パーティーがあるんだけど、奈美は来れない?こんな時じゃないとみんなに紹介できないから」

と誕生日パーティーに来てほしいとお誘いがあった。「こんな時じゃないと紹介できない」奈美の頭の中で勝手に、自分がみんなに紹介されると思っていた。

ケーキ屋さんで、プレゼントとしてかわいいケーキを用意し会場へ行くと、すぐに健ちゃんを見つけてくれた。

そしてすぐに、「紹介するよ、こちらが今度結婚する女性です」と奈美に紹介した。

そして奈美の事は「小さい時から一緒に遊んでいて、妹みたいな幼なじみです」と紹介された。

 

奈美は自分1人が間違っていたことに気づいた。そして仕事があったと思い出し、嘘をついて会場から走り去っていった。

片思いなまま、告白もしないのに振られてしまった。平凡な生活もこれで壊れてしまったのかもしれない。

手元には渡せなかったケーキだけが残った。会場にはすでに婚約祝いの大きなケーキがあったから、余計に渡せなかった。

行くところはどこもなかった。ケーキを持って会社の近くに行き、ベンチに座っていると、あの男性が現れた。

「健ちゃんて誰?」人懐っこそうに話しかけてきた。特に誰でもないです。片思いのまま振られた。

と、奈美が悲しむのをよそに、男性は何の許可もなくケーキを食べだした。「俺甘いもん大好きだから食べていい?」

どうせ、食べるつもりもなかったので、男性にケーキを食べてもらうことにした。すると「しょっぱいもの食べたくない?」と

奈美を自分のバイクの後ろに乗るように合図した。遠慮がちに男性の服をつかんだが、男性が自分の手で、

奈美の手を引き寄せて、自分にしっかりとしがみつくようにした。奈美はなんだかあったかい気持ちになった。

そして風がとても気持ちよかった。それを伝えたかったのに男性は名前を教えてくれた。「潤之介」

 

道に迷った2人

気づくと千葉の海岸まで来ていた。途中で道に迷ったこと言わず、海まで来てしまったのだ。

そこで差し出されたのが、缶に入った温かいおしるこ。「俺は甘いもの好きだから」とさっき聞いた言葉を繰り返した。

本当におしるこはとても甘かった。そんなとき電話が鳴った。以前編集長から預かったデザインのラフ画について、

和泉が表紙の撮影に向けて準備を任されていたが、周りに配置された花が、モデルにプレゼントする花だと思いバラの花束を用意した。

だけど、実際は表紙のデザインの背景にバラを持っていきたいと言うことだった。撮影は明日。すでにお店は閉まっている。

和泉のこの雑誌に対する思いを知っている奈美は、自分がバラを届けると、潤之介にわけを話し、バラ探しに付き合ってもらった。

しかし、全員で用意できたバラはほんの少し。表紙を飾るにはあまりにも少なすぎる数だった。

奈美は思い出した。帰り道に「バラ園」があることを思い出した。編集部の人々は、そこからバラを刈り取って用意したとしても間に合わない。

と、口々に反対したが、奈美は「バラは持って来れなくても、モデルはそこに行くことができます」

 

急遽翌日予定を変更し、バラ園で撮影を行うためにオーナーに撮影の許可をもらうため、奈美と中沢が頼みに行ったが

以前、テレビの撮影で使用された際に、バラ園をめちゃくちゃにされてしまい、それ以来貸し出すことを止めていると拒否されてしまった。

すると後ろから声がした。2人が驚いたのは無理もない。あの後に編集長が地面に土下座をしてお願いをしていたのだった。

そして、マリーアントワネットの話を持ち出し、ぜひこのバラ園で撮影をさせて欲しい。決してバラは傷つけません!

と、ものすごい熱意でオーナーにお願いし、撮影の許可が降りるとともに早速モデルが呼ばれ撮影が始まった。

するとどこからともなく、ファッション界でカリスマ的存在な男性が現れた。奈美には見覚えがあった。

編集長に言われるまま、衣装を取りに行き、その男性のために車を用意し、編集長の彼だと思っていた。

しかし実際は、この撮影のためにその男性と会い、撮影で衣装が使えるように交渉していたと言うことがわかった。

あのすべては編集長のわがままではなく、仕事に対する熱意そのものだったと言うことに奈美は初めて気付いた。

そして心の中で何かが動き出した…。

 

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